動画作業の手順

作業前の準備

タイムシートや原画を確認して、作業計画を立てます。一枚で、全体でどれくらいの作業時間がかかりそうか。原画に描かれている指示は?何か特殊な指示が描かれていないかなど。

下記のようにタイムシートと原画を見れば、カットの特長が見えてきますね。

原画と一緒にキャラ表や作画注意事項も送られてきているはずなので、必ずその作品上のルールをしっかり確認します。

動画作業はトータルですごく手間暇かかる作業です、スタートで認識を間違っていると失敗に気づいた時には挽回することが難しく。他のスタッフを巻き込んで迷惑をかけてしまうので気を付けましょう。


タイムシートに記入する

タイムシートに原画番号と中割りの指示が描かれています。指示を確認して、動画作業で描く必要がある枚数をカウントしてそれぞれの番号を書き込みます。

タイムシートを見たらわかりますが、アニメの画面は何層もの絵が重なっていて、層ごとに名前が付いています。一番下層のAセルから始まり、アルファベット順に増えていきます。

同じ層の素材でも、パーツの一部だけ別の紙に描く必要があったりすることもあります(そこだけ動く場合)。バラバラに作画したものは、後の撮影の工程で合成して1つにするので、合成の指示をした合成伝票を作成してタイムシートに貼り付けておく必要があります。


原画をトレスする

タップにトレスする修正原画を刺し込み(総作画監督修正のようなものがある場合は、先に総作画監督修正から作業)、動画用紙を上から刺し込みます。

トレス台を点けると下の修正原画の線が透けて見えます。

鉛筆で上から線をトレスします。鉛筆と色鉛筆で作業します。影の境界線は青や緑、ハイライトは赤など、作品によってルールが違います。

終わったらいったん両方タップから取り外します。

タップに原画を刺し込み、修正原画をトレスした動画用紙を上から刺し込みます。

修正原画は下記動画のように、原画の一部分だけ修正されたものが多いので、 修正原画で描かれていない残りの部分を原画からトレスします。

原画と動画をパタパタして線の抜けが無いか確認します。

動画を裏返して、陰にあたる部分に塗り絵のように色を塗ります。これを裏塗りといいます。以前は彩色作業のためにしていたようですが、現在はトレス線抜けの最終チェックの役割も果たしています。

用紙の上部に動画番号を記入します。基本的に原画をトレスした番号は丸で囲みます。

原画一枚のトレスが完了しました。これを原画の枚数だけ繰り返します。


中割りをする

タップに動きの前後となる原画トレス2枚を刺し込みます。動画用紙を1枚上から刺し込みます。ただ、2枚の原画トレスで大きく場所を移動している場合は、線同士が離れすぎていて、タップで重ねてもあまり意味がありません。

その場合は間の線を引きやすい場所で紙を重ねて、その中間の部分に動画用紙を重ねてクリップで3枚を固定します。中間をとるための基準は動画用紙上部に空けられているタップ穴を基準にします。これをタップ割りと呼びます。

トレス台を点けると2枚の原画のトレス線が透けて見えます。

中割りはその2枚の間の線を描いて、2枚の原画の間の動きを作画していきます。ど真ん中の動きでいい場合もありますが、原画に描かれた指に合わせます。後の原画に詰めた動きにしたり、1/3あたりの位置になるようにするなど。

真横にスライドするような動きなら、間の線を描いていけばよいですが、歩き・走り・振り向き・なびきのような単純な割り方では完成しない動作があります。難しいですが、そこが動画作業の醍醐味でとても楽しい部分でもあります。

まずラフを描いてからそれをクリンナップする人もいれば、ラフを描かずに一気に仕上げる人もいます。後者は「一発割り」と呼ばれる技術です。

すべての線を描き終えたら前後の2枚の原画トレスと、作成した動画をパラパラして線の抜けや間違いがないか確認します。

裏塗りをします。全部終わってからまとめてする人も。

用紙の上部に番号を記入します。原画トレスと区別するために丸では囲みません。

中割り動画1枚が完成しました。残りも同じ要領で作成していきます。


確認

すべての素材が完成したら、順番に並べて一気にパラパラ。全体の状態をチェックします。


チェック

チェック担当の方に問題が無いか確認してもらいます。慣れないうちは一発で通ることは少ないです。入れてもらった修正指示に合わせて修正します。1か所修正が入ると、関連する動きの素材、複数枚を修正することになります。

修正完了して、担当からOKが出たら一連の素材(タイムシート・原画・動画)をカット袋に入れます。カット袋には担当者の名前と、動画の枚数を描く項目があるので忘れず記入して、納品できるように決められた場所に置きます。


作業にかかる時間の計算をしましょう

動画作業はとにかく指定されたスケジュールに間に合わせる事が大切です。そのためにどう考えても無理な場合は、初期段階で責任者にハッキリ伝えて、妥協案の提示やヘルプを頼まないといけません。ただその見極めが甘くて信用されなければ、やる気がないだけと思われてしまうので注意が必要です。

まずカットの内容に目を通して、すべての原トレにかかる時間を計算します。最初の原トレは見極め通り、2枚目からはカット慣れからおのずと速度が速くなるのも計算に入れます。そして中割りにかかる時間は、前後の原トレ1枚にかかる時間から想定します。

私の場合は中割りはトレスの約1.5倍くらいを見ていました。中割りとトレスで半々な感じです。原トレよりトレス時間が短縮されるのは、自分の描いたラフの線はなぞりやすいのと、中割りは動きの中でサッと通り過ぎてしまう絵なので、原画トレス以上に時間をかけていてはいけないと思っていたからです。一発割り(※ラフを書かない)ができそうな場合も原トレの作業時間は超えないように意識していました。

これでひと通りの作業時間を割り出せます。でも始めた当初は原トレにかかる時間をぱっと見て割り出すのは難しいですよね。その想定ができるようになるまでは、試しに1枚トレスしてみて、そこでかかった時間を基準にします。

そして、描いた動画をチェックしてもらうために1時間くらいは見ておく。チェッカーさんがすぐチェックできる状態かも分からないので、ある程度余裕を持つ。そしてチェック後の修正から再チェックにも1時間くらいでしょうか。自分の作画時間を確保するより、チェック時間の確保の方が断然作品にとって有益で大事なので、ここは削れません。

上記の計算ができれば「今日の16時までにこのカット間に合う?」と聞かれた際に「14時までには終わります(昼食は終わってからでいいか)」とか「無理です、中割り4枚のヘルプをお願いします。その部分の原トレを先に済ませて、1時間後までには渡します」などの返答ができます。

そして本当にその時間を守って仕上げる事を積み重ねて、発言を信用してもらえるようになっていった気がします。大物カットで皆で手分けして作業するような時に、作業の分配を任されたりすると嬉しいものです。

無理でもどうしてもやってと言われる時もあります。その場合は妥協案ですね。「間に合わせるためには中割りの線や裏塗りが荒くなるので、出来ればチェッカーさんにこのカットは急ぎと話を通しておいてください。チェックと修正のために1時間は確保します」とか伝えておいたり。

ヘルプ要員で「中割り3枚30分で上げて!チェックはナシ!!」なんてこともあり、無理に間に合わせた事もありました。その後1時間くらい手が震えて他の作業が出来なかったりして。終わった瞬間からはいい思い出です。


目標を設定しましょう

想定する作業時間は現時点での自分の速度であって、常にそれをなぞって作業していても成長がありません。なので月間の目標枚数は多めに見積もって、達成するために現状より効率を良く作業できる方法を考えます。月間の目標はそのまま作業可能な日数で割って1日の目標枚数として意識します。

これは同じ作業時間で速度を速めるのが目的です。作業時間を長くする事で枚数を増やそうとは考えませんでした。翌日に疲れを持ち越して、月間では結局プラスマイナスゼロなんて事になるからです。

最初は基本的に自分との戦いですが、ある程度自信が出てきたら、他の人の枚数も意識しましょう。そこからは誰がチャンスを掴むかの勝負。判断基準は色々あると思いますが、誰が今月一番枚数が多かったかなんてのは必ず見られています。もちろんそのクオリティも合わせて見られています。