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アニメーターになるには、アニメを制作するには。

アニメの制作に携わりたい、けれどアニメーターになるにはどうしたらいいのか。体験談を交えながら紹介します。

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アクション作監やばい

他社から届いた動画用のカット袋の山をいつものようにパラパラと見ていたら

や・ば・い。

明らかにオーラが違うのが数カット混ざっているじゃないですか。もちろんどれも同じ人が描いたもの。

線が太い!
線がきれい!
線が走ってる!
動きが自然すぎる!
そこに存在しているような質量感!
必要最低限の画数でキャラクターが描きあがっている!

こんなの見てしまったのでたまらず、この人のカットを割りたいと申し出てみた。怪訝(けげん)な顔をされる。そりゃ都合のいいカットを選んだと思われても仕方がない。いつもはこの人がすべてのカットの内容を確認して全員に振り分けているのだから。

でも、中身を見て「これならいいんじゃない」と言われる。そもそも枚数を稼げるようなカットではないし、どちらかというと大変な内容。他の動画スタッフにも確認してもらい、特にやりたい人がいなかったので晴れて自分の手元に。

作品名とカット袋の名前で検索したら、なるほどこれはその作品のアクション作監の原画だ。

そこで今まで思い違いをしていた事に気づく。アクション作監はもっともっとラフな感じでアクションに特化していて、ディテールはその回の作監に任せるようなイメージだったけど、ちゃんと考えたらそんなはずがないよなと。キャラも似せつつ、自然すぎるアクション。これぞ原画のプロフェッショナルだと感動。

スペシャルなカット用の先輩から貰った(高い)鉛筆で気合を入れて挑戦。動画をある程度経験したら分かってくるのだけれど、パッと見で難しそうでも実際は難しくなどないカットが存在する。こういう人の描くものは、新人が恐る恐るトレスしても不思議と見栄えのする絵のままだし、中割りするにしても原画同士のつじつまが合っているので非常にサクサクと作業が進む。必要な絵がすべて用意されているのが分かる、凄い。

次の日に、唐突に、「この一連のカットのチェックは自分がやる」と言われて驚く。ヌルヌルアクションを描きつつキャラデなんかも出来ちゃう先輩だ。自然と「ふぁ?」と声が出てしまうような事態。こんな忙しそうな人の所に一体いつ持って行ったらいいんだとか緊張しながらも、なんか面白そうなことになってきたぞこれは。



そして、いざ、チェックの時

動画素通りして原画を修正してるううう!!!



青天の霹靂、脳みそにビシバシ電気が走ってるのが分かる。まあ、大きくアクションを変えるとかではなく、末端的な所のディテールを整える感じなんだけれど。

原画1枚に修正を入れたら、以降の原画にも全部はいるだろうな、原画に全部入るなら動画は全部描き直しってことですね!むむむ~。

いままで自分がした作業は一体なんだったんだろうかなんて考えつつも。その衝撃は、心底まで私に業界最大のルールを叩きこんでくれました。

上手さは正義。

新人動画には考えもつかないことだけど、この人がクオリティアップになると踏んで原画に手を加えて喜ばれる事はあっても、誰が文句を言うだろう。ないない。絶対自分が手を加えた方がいいモノになるという実力に裏打ちされた自信があるんだ。やばい、新鮮、カッコイイ! もはや中割りもね、これは中割りじゃないですよね、割ってないですよね、これは参考原画ですよね?ははーん。

思考とはうらはらに、ずっと無言で作画作業を見続け、一時間経過。「やっとくから戻って別の作業してて」とのこと。翌日の朝、私の机の上にはそのカットが・・・。


もう一度最初から動画を描きなおすことにはなったけれど、修正ガッツリだからほぼトレスと均等割りのみでその後は修正無し。「一度しっかり手は加えたしOK」みたいな思い切りの良さも絵の上手い人に多い特徴かもしれない。本当に迷いが無く効率がいい。ともあれ、今回のことは本当に勉強になったし助けられた。その後の動画との向き合い方が変わりましたね。

それまでは原画至上主義?でトレスの際に原画の絵に手を加えるなんて、線抜け・パーツ抜けを見つけた時くらいだったけれど、明らかに変な所はそっと整えてもいいのかもしれないという気になった。前後のつじつまが取れている原画だったら1枚直すと全部さわらないといけなくなるけど、つじつまが取れてないのを整えるのなら変な分だけに手を加えればいいし、それなら自分にも出来るかもしれない。

中割りだって「タップ割り」を教えられたから、なぜかそればかりで作業してたけど、正直絵を描いている感じが全くしなかった。その上すごい修正されるし、原画と修正を見比べて「この原画からこの中割りは(タップ割りでは)描けないよ」とずっと思ってた。なんかチェッカーさんが原画的修正をするためのアタリを描いているんじゃないかという気分。

「それ中割りじゃないよ参考原画だよ」騒動から、自分がタップ割りだけにこだわりすぎていた事に気づいたので、中3枚の真ん中の絵くらいはある程度自由に描いてみるか、なんて所から始めていきました。それなら多少変化を付けたとしても残りの2枚で緩和されるし。

そもそも、タップ割りだけで動画を作れなんて言われてなかったよね、自信がないからって一番簡単な定型通りの作業をすることで責任を果たした気になって逃げてましたね。チェッカーさんすみませんでした、遅ればせながら気づきました。

自分の手を加えると言うことは、その分責任がのしかかってくるもので、トレスも中割りも、間違ったら責任は取らないといけない。チェッカーさんに注意されて修正修正。ところがそんな事は起こらず、ここから動画の修正はどんどん減っていったのです。


アクション作監の数カットの原画が、あの人にチェッカーをするとまで言わせて、そのチェック作業から勉強させてもらった動画マンがいて、その後の動画マンのモチベーションも給料も上げてしまうというミラクル。

そんなこんなで、今だにアクション作監の印象はいろんな意味で「やばい」のままなのです。
ほんとやばい。


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